父の形見、カルティエのボールペン

私の父は、ブランド物が好きという訳ではないのですが、良い物は良いと認識している人でした。
それが、たとえ高価であったとしても、価格という物は、その品物がそれだけ良い物だからそれに見合った値段がついているのだと思っている人です。
やみくもに、みんなが持っているからとか、何が何でもどこどこのブランドの物でないといけないというような人ではありませんでした。
例えば、建設業を営んでいた父は、作業着が仕事着でしたが、出かける時や会合などで背広を着ていかなくてはならない事も多々あったので、ワイシャツなどは、当時からデパートのお誂え品できちんとイニシャルを入れたものを着ていました。
それなりの物を着たり持っていたりしていると、人はそれなりに判断してくれるものだとか言っていました。
若い者が、広告やコマーシャルや人に流されてブランド物にこだわっていると、ブランド物の品質まで見落とされがちになってしまうかもしれませんが、ある程度の年齢になると、ブランド物の必要性も出てくるのだと思います。
そんな父が持っていた物の中で、子供心に私はこんな物までブランド物があるのか、と思ったのがボールペンです。
今では、いろいろな物がブランド物にはあるのは当たり前と知っていますが、
当時幼かった私には、ブランドという物がどういう物かも知らなかったくらいなので、それが1本数百点のボールペンが、
ブランド物だとは、それほど高級な物を自分の父が持っているのかという事に驚きました。
金色に覆われた、細い筋がたくさん入った、ボールペンでした。
私には高価な物だという事は分かっていましたので、とてもキラキラした綺麗な物に見えました。
父が留守の間に、事務所の机に置いてあったのを、そっと手に取って試し書きをしたら、書き味という言葉は知らなかった幼い頃でしたが、柔らかくすーっと字が書けたのを鮮明に覚えています。
父が亡くなった今、そのカルティエの思い出のボールペンは、形見として私がもらいました。

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